MRIについて

MRIは強力な磁石と電磁波を使って断面像を得る検査です。CTと比較してX線被曝がない、様々なコントラストの画像が得られるという利点があります。T1やT2などの核磁気共鳴現象のパラメータを利用して、異なる組織や病変を区別しやすい画像を作り、病変の特徴を知ることができます。また、任意の断面を画像化できるので、病変と周囲の正常組織との関係が把握しやすいという利点もあります。

現在北大病院の診断用MRI装置は1.5テスラ装置が2台、3テスラ装置が3台稼動しています。3テスラ装置では頭部だけではなく心臓を含む胸部、腹部、骨盤、関節といった全身の部位を撮像し、高いコントラストを活かした高分解能画像を提供しています。装置によって使用できる撮像方法や画質に違いがあるので、症例や撮像部位により使い分けを行っています。

3テスラ装置(3台)

1.5テスラ装置(2台)

 

MRI装置における代表的な臨床例を臓器別に紹介します。

頭部中枢神経系領域

3テスラ装置の高分解能を利用することにより、MR血管撮影による小さな動脈瘤の評価や、脳表の解剖学的イメージングとMR静脈撮像(venography)との合成像(図1)、3D撮像による小さな転移性脳腫瘍の検出、微細な解剖構造や脳神経の描出などに幅広く使用されています。特殊な撮像法としては、拡散テンソル画像や拡散尖度画像、磁化率強調像、定量的磁化率マッピング、動脈スピン標識法(ASL)、4DMR血管造影(4D-MRA)、灌流画像、MRスペクトロスコピー(MRS)などが使用されています。拡散テンソル画像により、神経線維の走行の描出(Tractography)を行い、脳腫瘍の術前計画に利用されています(図2)。磁化率強調像や定量的磁化率マッピングは、外傷後の微小出血や正常静脈を高い精度で描出することができ、最近では認知症の研究に取り組んでいます。(図3)ASLや4D-MRAでは、造影剤を使うことなく、非侵襲的に頭蓋内の血液潅流の画像化を行うことができます。(図4)MRSでは非侵襲的に頭蓋内の構成される成分を検出することができ、腫瘍の評価や代謝性疾患の評価に応用しています。

図1
図2
図3
図4
 
 

体幹部領域

心臓MRI: 特に重症三枝病変における診断能の高い高分解能画像による負荷perfusion MRI検査で、虚血の評価(図1)を行っています。遅延造影MRIや T1マッピングという技術を用いて、心筋バイアビリティ評価(図2)および各種心筋症の鑑別診断を行っています。また、冠動脈の非造影MRangiography(図3)も行っています。

図1
図2
図3

乳腺MRI: 3テスラ装置を用い造影ダイナミック撮像による腫瘍の血流評価と高分解能撮像による腫瘍形態の詳細な評価を行い、術前の癌の広がりを診断しています。視覚的に乳癌の部位や広がりを認識しやすいよう、3D画像を作成し、診療に役立てています(図4)。また、術前の化学療法やホルモン療法に対する治療効果判定を行っています。

図4: 乳腺MRIから作成した3D画像
 

骨盤MRI: 日常臨床において、子宮筋腫(図5)や子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣腫瘍などの種々の婦人科病変に対して幅広い診断を行っています。また、子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌など婦人科癌の進展度評価や治療効果判定、再発の診断などを行うなかで、最新の撮像技術や高精細な画像を用いて、微小病変の検出や詳細な進展度評価などを行い、診療に役立てています。産科領域においても胎児奇形や胎盤の評価などを行っています。

図5: 骨盤MRI
 

腹部MRI: 肝胆膵、消化器といった腹部臓器の疾患の診断にMRIは用いられています。例えば、MR胆管膵管撮影(MRCP)では胆嚢や胆管、膵管を明瞭の描出することができ、CTでは指摘できないような胆嚢・胆管結石の評価に優れています。また、肝細胞特異性ガドリニウム造影剤を用いた肝臓MRI(EOB-MRI)では、造影剤の血流動態による評価と肝細胞機能による評価を一度に行うことができ、転移性肝腫瘍や肝細胞癌の評価において高い診断能を有しています。

骨軟部MRI: 関節の評価において、MRIはCTや単純X線写真と比較すると腱や筋、靱帯や半月板といった関節を構成する要素の描出においてコントラスト分解能に優れている(組織ごとの信号差が明瞭)であり、また浮腫性変化や断裂の有無と言った損傷の有無の評価にも適しており、外傷や変性疾患の評価に広く用いられています。

骨軟部領域の腫瘍性疾患においても、様々な撮像法を組み合わせて評価することによって病変の広がりや内部の性状の評価を行うことができ、診断に有用な情報を得ることができます。